穀物庫の扉
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本の棚  本についての感想です。

作品名 著者 出版元 初版発行日 価格 ISBN
暁の天使たち3 海賊王の帰還 茅田砂胡 中央公論新社 2002年11月30日 本体900円+税 4-12-500788-8
暁の天使たち4 二人の眠り姫 茅田砂胡 中央公論新社 2003年03月25日 本体900円+税 4-12-500799-3
暁の天使たち5 女王と海賊 茅田砂胡 中央公論新社 2003年7月25日 本体900円+税 4-12-500812-4
悪魔のミカタ 魔法カメラ うえお久光 メディアワークス /電撃文庫 う-1-1 2002年02月25日 本体570円+税 4-8402-2027-1
学校を出よう! Escape from The School 谷川流 メディアワークス /電撃文庫 た-17-1 2003年06月25日 本体590円+税 4-8402-2355-6
学校を出よう! I-My-Me 谷川流 メディアワークス /電撃文庫 た-17-2 2003年08月25日 本体570円+税 4-8402-2433-1
クビキリサイクル 西尾維新 講談社 /講談社ノベルス ニJ-01 2002年02月5日 本体980円+税 4-06-182233-0
クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 西尾維新 講談社 /講談社ノベルス ニJ-02 2002年05月08日 本体980円+税 4-06-182250-0
さみしさの周波数 乙一 角川書店 /角川スニーカー文庫 S 134-3 2003年01月01日 本体457円+税 4-04-425303-X
涼宮ハルヒの憂鬱 谷川流 角川書店 /角川スニーカー文庫 2003年06月10日 本体514円+税 4-04-429201-9
Hyper Hybrid Organization 01-02 突破 高畑京一郎 メディアワークス /電撃文庫 た-5-7 2002年11月25日 本体550円+税 4-8402-2028-X
LOVE WAY 若木未生 集英社 /コバルト文庫 わ1-40 2003年01月10日 本体476円+税 4-08-600209-4
レディ・ガンナーと宝石泥棒 茅田砂胡 角川書店 /角川スニーカー文庫 113-4 2003年03月01日 本体514円+税 4-04-423104-4



暁の天使たち3 海賊王の帰還 ▲
茅田砂胡 著 /中央公論新社
2002年11月30日 初版発行
ISBN4-12-500788-8
本体900円+税
 面白かったです。久しぶりに「スカーレット・ウィザード」を読みたくなりました。
 危うい綱渡りだとしても、基本的な技量とセンスで最後の一線を踏み越えないところを素直に賞賛します。プレッシャーの下でとにかくお話を作った気分になって安心する作家ならそれまでなのですが、そういった筆者の不安感をキャラクターの言動に投影しないところを得難いものと思いました。(2002/12/10)


暁の天使たち4 二人の眠り姫 ▲
茅田砂胡 著 /中央公論新社
2003年03月25日 初版発行
ISBN4-12-500799-3
本体900円+税
 やーなんだか色々問題はあるような気はしますが、これはこれでいいんじゃないでしょうか。面白いし。本当に、ハーレクイン・ロマンスとしては最高の出来です。何を面白いと感じたのか説明するのは難しいのですが、スジを通す姿勢が結構好きだったりします。

 それにしても、レティーとヴァンツァーは今回全く出番ナシですねー。いや、いいんですけど。(2003/3/29)


暁の天使たち5 女王と海賊 ▲
茅田砂胡 著 /中央公論新社
2003年7月25日 初版発行
ISBN4-12-500812-4
本体900円+税
 ああ、面白かった〜。

 あんまり面白かったんで、ついつい「スカーレット・ウィザード」シリーズを全巻読み直してしまった。改めて読むと、一巻の時点からケリーが、結婚した(本当の)理由について含みがあることを言ってますね〜。

 力技ですけど、驚愕を噛み砕いて読み手に提示するために用意したであろう『ダンに状況を見せる』(読み手に視点を提示する)というシチュエーションを、親子のエピソードに繋げたことにも感心しました。あと、スコット顧問のエピソードはどこかに繋がるかなぁ。

 それから、ジャスミンの告白シーン。挿絵との相乗効果がなんとも。なんだか本当にジャスミンが『かわいい』と思えてしまったのが怖い。ケリーの「第一さっきと話が違うじゃねえか」もマル。ここまできっちりラブロマンスするとは思わなかった。サービスいいなぁ。

 あとは、アレクサンダーとの再会シーンが楽しみです。展開的には人質にされると思うのだけど、どうかな。


 ルウについては、ガイアがここまで傍観しているのが不思議。というかここまでやったら、最終的にはこの宇宙から追放されそうな気がする。(2003/07/31)


悪魔のミカタ 魔法カメラ ▲
うえお久光 著/メディアワークス 電撃文庫 う-1-1
2002年02月25日 初版発行
ISBN4-8402-2027-1
本体570円+税
 思えば一年前、書店の棚に新刊として並んでいたこの本の、背景画一切ナシの白地に人物画のみという意識的に半歩間違ったすばらしい装丁センスに惹かれたのです。あるいは、面白い本に勝手に反応する第六感レーダーにヒットしたのか。

 いい本です。展開にスピード感があり、着想もユニーク。文章もこなれていて読みやすい。そしてなにより、主人公の堂島コウの思考パターンがいい。ぼくという人間を理解してもらおうと思ったら、この小説を読んでもらって「こんな人間なんだ」と説明すればそれで足りるというか、いやそれは嘘で、本当はここまで純粋に自己中心的ではない自分本意なスタイルは持っていないのだけど、そういうスタイルのさらに芯の部分で自分の価値を肯定しない態度に共感します。そしてなりより、純化された虚構ではあるけれども、それを見事に描ききった著者の力量に拍手。

 とまぁ、あまり一般的とは言えない個人的なツボにヒットするこの作品ですが、エロゲ好きなら思わずニヤリとしてしまうシチュエーションの連発にも特筆するべきものがあります。というか、エロゲ好きなら読みなさい。損はしないから。


追記 「ぼくは、きっと誰が死んでも泣かない。泣かないようになってしまった。だから、君がうらやましいよ。堂島コウ」(2003/3/17)


学校を出よう! Escape from The School ▲
谷川流 著 / メディアワークス 電撃文庫 た-17-1
2003年06月25日 初版発行
ISBN4-8402-2355-6
本体590円+税
 妹の幽霊に憑りつかれた少年が遭遇する、超能力者ばかりを集めた学園でのドタバタ劇。……なんだけど、想念体退治のドタバタとキャラクターの掘り下げがリンクしていないのでどうにもつまらない。

 幽霊の春奈はブラコンのお子様で、生身の方の妹の若菜は隠れブラコンのほんわか娘、顔見知りの対魔班班長の宮野は想念体退治を使命とする唯我独尊タイプの自信家で、コンビの光明寺茉衣子はちよっと掴み所のない不思議系少女で(宮野に対しては)毒舌家……とまぁ大雑把にまとめてみたけれども、そういう極端で、ある意味便利なキャラクターをドタバタと走り回らせ、あるいは思わせぶりなことを言わせてみたりしても、その予定調和的な言動に読み手として意味を求めることができない。楽しくない。

 この人物はこういう性格ですと説明して、以後小説内のイベントについてこういう性格だからこういう味付けにできます、どうですか、という手法では、読み手としてキャラクターを立体的に構築することはないし、できない。極端な設定は、個々のイベント(資源変動)において結果に対する万能の理由づけになりうるけれども、結果とその過程から個性を再構築する喜びを読み手から奪うことにもなる。

 ならば、イベントの連鎖だけで十分に魅せるジェットコースターノベルになり得ているかというと、そうでもない。「非現実的な」という味付けは案外実現が難しく、リアリティの構築に対して手を抜くことへの言い訳に容易に転化しうる。そうして、一度そういう甘えを作品世界に許してしまうと、もはや何をしても取り戻せないのだった。

 若菜と主人公の関係性や、真琴のキャラクター性については、ステロタイプから一歩踏み込んで細部を想定する楽しさがあったけれども、メインストリームである春奈と主人公の関係性や、あるいは主人公自身の個性についてそれができないのでは本末転倒である。

 どうにも、これが最近の傾向(であるかもしれないところ)の「萌え」要素の羅列というやつなのだろうか。何だか無性に笹本祐一氏の「ハレーション・ゴースト」を読み返したくなってしまった。


 ところで、作中に「コンニャクに斬鉄剣」という記述があって、こりゃ作者30歳超えてるなと思ったら、やっぱりそーだった。スニーカーや電撃の新人にしては珍しいね。(2003/08/26)


学校を出よう! I-My-Me ▲
谷川流 著 / メディアワークス 電撃文庫 た-17-2
2003年08月25日 初版発行
ISBN4-8402-2433-1
本体570円+税
 血塗られた包丁を持って雨の路上に立ち尽くす主人公・神田A、彼は7日までの記憶しか持っていないが、腕時計によると13日の世界からやってきたらしい。そして、自宅に逃げ帰った彼が遭遇したのはやはり7日までの記憶しか持たない7日の世界からやってきたらしい神田Bだった。そして、現在、10日の世界にいる神田Nは今何をしているのか……という導入で始まるお話。

 おお、面白い。なんだか面白いぞ。

 タイムトラベルものなのだけど、過去の自分と未来の自分、その同じ自分が出会い、一緒に過ごすことになって繰り広げる自分とのぼけつっこみがすばらしい。このあたりの呼吸って、関西人ならではだよねぇ……って、関西が舞台とかいう記述はないけど。著者のヒトは兵庫県在住だそうで。

 “Escape from The School”とは違って、様々なイベントの発生にリンクして主人公の内面が可塑的に丁寧に描かれるのがよい。素直に主人公に感情移入できる。記憶喪失に関する理屈など読んでいる最中は眉唾ものだと思ったけども、真相が明かされた後はなるほどと納得。そうか眉唾で当然なのか。

 ただ、あの二人組が出てきたのは気に入らない。デタラメなあのキャラクターたちはこの作品で描かれる神田君の個性の繊細な描写に対する異物以外の何者でもない。そして、血の通ってない作り物めいたそれらの人物に主人公が馬鹿にされるくだりにいたっては、噴飯モノだ。前作と関係付けたいのはわかるけども、心底もったいないと思う。

 あと、妙にエロゲ的というか。「音透湖さんを誘拐して同じことをした、と」「ミーでもたいがいギリギリを超えてるってのに、この子じゃ完全アウトじゃねえか!」(p.89)とか、「もしくはお二人が」(p.104)とか、モラル的に踏み込むのはいいが、いやよくないのだが、中学1年生や10歳の女の子を性的なカテゴリーいれてしまうのはやめて欲しいなぁ。このあたりについては、星名サナエの発言ということで、作品的にはきちんと説明されるのだけど、あえてそのラインを狙う作者の節操のなさがちと許せないところではある。

 あと、黒猫のクロフは竹本泉ネタですか。「その瞳から攻撃色が消えている」(p.159)、って王蟲かよ。猫型ロボットのタイムマシンのエピソード(p.173)、コミックスで読んだことがあるといったら相当上の世代になるぞ。でも、あれは間違いなく名作だった。子供心に、バイバインの話と同じ位になんだか怖かったなぁ。「時間切れ、はい消えた」(p.180)、ってなるほどザ・ワールドかい。……と、こういう小ネタ捜しは結構楽しい。まぁ、作者と同世代だからだろうけど。

 最後の時間跳躍シーンについて、当時の彼女がパラドックスまで認識してコトを為したとは到底思えないのだけど、それすらもEMP能力の一部だというのなら、もはや『普通』の枠には留まれないのもわかる。主人公との関わりといい、なんとなく山本弘氏の「サイバーナイト」を思い出してしまった。ブレイクスルー。

 というわけで、前作は嫌いですが(ええ、冷静な評価とはかけ離れた次元で『嫌い』です)、こちらはお薦めします。(2003/08/28)


クビキリサイクル ▲
西尾維新 著/講談社ノベルス ニJ-01
2002年02月05日 第一刷発行
ISBN4-06-182233-0
本体980円+税
 面白かったです。特に「後日談」の仕掛けには感心しました。これだけで、読む価値はあるでしょう。ただし、手放しでお勧めしたい作品ではありません。

 この作品には作中世界で天才と呼ばれる人間が頻出しますが、ある特定の能力が突出しているだけで基本的には愚かです。超人的な洞察力や、あるいはESP能力すら備えていたとして、その優越性ゆえに他者や世界を睥睨して自己と切り離してしまうのは、フィクションの中でのみ許される贅沢です。そんな「引きこもりの達人」程度の存在を「天才」として語るのは、最初から自分以下の存在をパペットにして物語を構築するための技法であって、そういう意味で人間の存在感はこの作品の登場人物にはありません。だからこの作品は「後日談」の仕掛けを見せるだけのただの娯楽小説です。

 著者は、これら「天才」の群像をサヴァン症候群になぞらえていますが、そういう判りやすさへの甘えは嫌いです。モラルの欠落はあくまで当人の責に帰すべきであって、それをサヴァンになぞらえるのは礼を失している、あるいは分を越えていると思います。人物造詣のリアリティから目を逸らすための便法として利用するだけであるのならなおさらです。

 トリックに無理があるのはぼくは気にしません。文体について、崩してみようとする作者の意図は評価しますが、おそらくは著者の意図していないであろう箇所で違和感を覚えるところもふたつみっつありました。

 全体として、森博嗣氏の犀川&萌絵シリーズと似ています。ただし、「天才」に対する劣等感の裏返しめいたアプローチと、思春期の青年めいたモノローグの切り口は独特です。それが「悪い」とは思いません。人のしていないことをする、それだけで十分敬意に値します。ただ、そういうプラス評価がひねくれた読み方の産物であることは自覚していますので、万人にお勧めできる作品とは言えません。(2003/3/1)


クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 ▲
西尾維新 著/講談社ノベルス ニJ-02
2002年05月08日 第一刷発行
ISBN4-06-182250-0
本体980円+税
 相変わらず、人物造詣については確信犯的におざなりです。ええと、とりあえずキャラクターは立っていますが、人間心理の深みを鮮やかに切り取るという方向性ではなくて、作者の一人語りのための予定されたギミックでしかありません。

 結局、前作と同様にこの作品の見所は終章の「終われない世界」での仕掛けにあって、それ以上のものはありません。ただし、この仕掛けは相当に見事なもので、叙述にトリックのタネを仕込む外法ではありますが、人のしないことをするその着想と実行力に感嘆します。

 主人公(名前が覚えられない、というか名前ってどこかで出たかな)のモノローグそれ自体はあまり面白くないですね。壊れ具合を自慢されても何の感慨もいだけません。共感する気もない。ただ、ストーリー展開のタネとしては面白いと思うので、その散漫に放り出された人格が収束するお話に期待します。最後でネタフリもされていることですし。

 クビキリサイクルでは、一般的にはあまりお薦めできないと書きましたが、こちらの作品はエンターテインメントに徹している分誰が読んでも楽しめると思います。刹那的な快楽の後には若干のキモチワルサしか残りませんが、一読の価値はありますよ。(2003/3/30)


さみしさの周波数 ▲
乙一 著/角川スニーカー文庫 S 134-3
平成15年01月01日 初版発行
ISBN4-04-425303-X
本体457円+税
 「死にぞこないの青」で、教師のねじくれた心のあまりにリアルなグロテスクさにメゲて途中止めにして以来、久々に目を通した乙一氏の作品です。

 この人の文章には違和感がない。読んでいる最中に一瞬たりとも不自然さを感じるところがなく、なんの引っかかりも覚えずに文章を追うことができる。それが、どれほど気持ちのよいことか。人物描写とか構成力とか、それらももちろん重要なポイントですが、基本となる文章力そのものに今回改めて感心しました。

 お話的には、アイデアに凝ったものこそありませんが、虚構と現実の、やや現実よりなところに収まることによる余韻がなんとも言えませんでした。

 しかし、「手を握る泥棒の物語」だけは異色ですね。いや、「さみしさの周波数」という本のタイトルとあまり関係がないところが。他の作品は、何かを失うことによって得られた現在(いま)、その裏返しとしての追憶めいた「さみしさ」がテーマかなと思います。あえて、見出すならですけど。

 もっとも、ぼくが一番気に入っているのは……というよりも忘れられそうにないのは「失われた物語」なのです。それは究極の愛惜。自己を全否定して得られるささやかな、けれど十分な満足。(2003/3/5)


涼宮ハルヒの憂鬱 ▲
谷川流 著 / 角川書店 角川スニーカー文庫
2003年06月10日 初版発行
ISBN4-04-429201-9
本体514円+税
 高校生活初日、お決まりの自己紹介でとんでもない挨拶をかましたのは、涼宮ハルヒというえらく美人なクラスメイトだった。とにかく『普通』が大嫌い、『変』をこよなく愛し捜し求める彼女は、無理やり同好会(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団、略してSOS団)を設立する。そこに集められたメンバーたちは、実は……という導入で始まるお話。

 なんというか、とてもバランス感覚に秀でた書き手さんであるとの印象を受けました。

 まず、乳揉みシーンとか、着替えシーンなどのいわゆる露骨な「萌え」要素の投入について、あえてキャラクターに「萌え」という言葉を語らせることにより書き手の黒子姿をきちんとカモフラージュしてあるのがひとつ。

 そして、世界を破壊する行為をやめさせていること。

 ハルヒのイライラは子供じみている。彼女の目は世界を見ていない。世界を見ない者の、どこまでも自分本意な空想と破壊願望。それは誰にでもあり、いつまでもあることだけれども、同時にオトナであれば自分を取り巻く世界の豊かさ、得がたさ、大切さ、そして計り知れなさもどこかで識っているはずなのだ。

 だから、これはハルヒの成長の物語。そして、ライトノベルという何でもアリの空想世界において、タガを外した破壊に流されることなく物語世界を日常に戻す、そこで踏み外さずに戻ってきた著者のバランス感覚を賞賛します。ただ、ラストの転調を引きたてるために、キョンにとらせた厭世的な態度はやや行き過ぎていると思いますが。


 後は、小ネタ。

 「刻の涙を見た」(p.44)……って、Ζガンダムかー。「裏山に宇宙船が」(p.95)……って、まんま「裏山の宇宙船」? でもぼく的に宇宙船が埋まっているときたら、「シリウス・コネクション」なのですが。裏山じゃないけど。ところで、メイド姿の朝比奈さん、「ロリで美乳でメイドでしかも眼鏡っ娘!」(p.131)ときて、『殻の中の小鳥』のリースを思い浮かべてしまう自分は間違ってますか。うむ、少なくともあれはロリではない。で、長門さんはどーしても『朝の来ない夜に抱かれて』に登場する華蔵都子のイメージになってしまうのですが。まあ、いいけど。


 で、中ネタ。

 ハルヒの能力って、EMP能力でしょうか。であるならば、あと3年もしたら消えて無くなるわけで、世界の危うさ(とそれゆえに作品世界を覆う暗い影)もまだ許容範囲に落ち着くのですが。

 ところで、星名サナエの能力があらゆる情報を読み解く力であるならば、涼宮ハルヒのあらゆる情報を創造する力とはちょうど対になりますね。お互いに、全能ではなく。(2003/09/01)


Hyper Hybrid Organization 01-02 突破 ▲
高畑京一郎 著/メディアワークス 電撃文庫 た-5-7
2002年11月25日 初版発行
ISBN4-8402-2028-X
本体550円+税
 基本的な文章力があるので気持ち良く読めます。ただ、ワープロ原稿に特有の癖とは思いますが、句読点が多めになっているのは自覚された方がよいのではないかと思いました。読んでいるうちに気にならなくなるので読み手側としてはあまり問題はないのですが、文章の書き手として知っておいて損はないでしょう。

 仮面ライダーを悪の組織サイドの、それも一構成員の視点から具体的に描こうという試みは面白いと思いました。前巻の“01-01 運命の日”ではお話作りだけで精一杯という感じで、キャラクターの言動に具体的なリアリティが感じられず、失礼ながらこの先どうなることかと思っていましたが、今回のお話でキャラクターの造型に厚みが備わり、組織的な考察についても正直面白いと感じました。先が楽しみです。

 蛇足となりますが、この方の著作「タイム・リープ」を評価する人は、ケン・グリムウッドの「リプレイ」も合わせて読まれることをお薦めします。当時、高畑氏や担当編集者が執筆時にこの作品を読んだことがないと感じられる記述が作中にあることを残念に思ったものでした。(2002/12/30)


LOVE WAY ▲
若木未生 著/集英社 コバルト文庫 わ1-40
2003年01月10日 第1刷発行
ISBN4-08-600209-4
本体476円+税
 藤谷直季がボーカリストをしていることが嫌いだった。調律されたピアノのように正確な音程、そんなもので良しとするのは。

 それはきっと楽器屋さんの発想で、風邪を引いた状態で声をつくることがどれほど困難なことか。喉を鍛えること、鍛えた喉を維持すること、頭蓋の共鳴調節の難しさ。ただの一週間でも練習をサボれば、せっかく上った高みから一体どれほど滑り落ちてしまうものなのか。そんなことも知らないままに、ボーカリストとしての藤谷直季の適性を疑いもしない西条朱音の頑なさが嫌だった。

 楽器屋さんの視点から音楽の高みを語るグラスハートという作品は、ぼくにとってジレンマの塊なのです。だから、嬉しかったですよ。今回は、「歌」が主役のお話。

 「ムーンシャイン」で、頭の左外側を何かがぐるぐる廻るような衝撃を受けてからすでに別格となったこのシリーズですが、相変わらず上手いです。文体の疾走感はもちろんですが、単に言葉として表現されたことのみに留まらず、そこに含まれる言外の意を読み手に理解できる形できちんと示す会話+メタ会話+モノローグという技法において、この人ほど優れている方をぼくは知りません。

 読んですぐわかるレベルのもの以外にも、読み進むうちに「ああ」と腑に落ちたり、あるいはキャラクターに対する理解を操作する焦点として鮮やかに浮かび上がってくるその仕掛けに感歎したり。それは、「会話の再現+プレイヤーの取捨選択による付帯情報の伝達」というほぼ同種の形で全ての心理を表現するテーブルトーク・ロールプレイング・ゲームにおいて夢に見た、そして辿りつけなかった高みを見る羨望と嫉妬。

***
 オーラバスターシリーズの「永遠の娘」では暴走ぎみでしたが。ふと、水杜明珠さんのヴイシュバ・ノール変異譚シリーズ最終巻を思い出しました。書き手が脳裏で想起する会話には、表情や口調などのノン・バーバルな情報伝達が伴いますが、そういう視覚情報を噛み砕いて再構成しない会話文は読み手にはさっぱりです。キャラクター同士で勝手に分かり合われても、ノン・バーバルな部分でなにが伝達されたのかわからない読み手は蚊帳の外。
 そのための技法は確かにリアルではないけれども、読み手に理解への梯子を提供するための必要なフィクションではないかと思います。その限界を超えて先へと至る道も、おそらくはあるのでしょうが。
***



 以下は蛇足。

 サンプリングしてちぎってつないで無限ループにしてディレイをかけてぐるぐるまわす―― come out show them――そういう想像は面白くないですか。でもライヒの音楽も、「詩篇」は結構いけるんですよ。初期の作品とはすでに別物ですけど。でも、どこかにある繋がりとしては面白いかなと。

 あと、有栖川さん喋りすぎです。少し、書き手の都合を感じた気がして嫌でした。寝物語でプライベートを語るのは、ぼくには幻想のような気がします。いやそういう人がいることは想像できますが、それができない人もいる。もしそれができるなら、有栖川はぼくが思うよりもオトナなのだろう。

 それから、藤谷さんは悪党ですねー。不作為犯ですが。桐哉が「カナリア」を止めて、“chrome plate” のジレンマを超えて、そうしたら真崎くんは「返却」ですか。モノが見えすぎるのは幸せではないけれど、人の幸せが自分の幸せになるといい。自分を悪人に仕立て上げなくてはそれができないモラリストぶりが結構好きですよ。(2003/2/21)


レディ・ガンナーと宝石泥棒 ▲
茅田砂胡 著/角川スニーカー文庫 113-4
平成15年03月01日 初版発行
ISBN4-04-423104-4
本体514円+税
 レディ・ガンナー・シリーズ3作目となる本巻ですが、シリーズ展開上では幕間的な作品かと思います。異種人類と無形種の確執や別シリーズとの連結が特に示唆されるわけではなく、ごく普通の冒険活劇ものとなっています。

 ただ、後半部分でのジュリアーノによる説得攻撃には感心しました。テープルトークRPGのゲームマスターがここまで喋ってくれたら、本当にころりと騙されるかもしれません。それくらい巧みに説得シーンを構築してあります。著者の懐の広さを感じます。

 いちゃもんをつけるとしたら、巻頭の駆け落ちシーン。あの二人の会話こそ、『芝居がかった』台詞そのものでは。それを承知で、あの台詞廻しは決して芝居のそれではなかったとキャラクターに判断させるのはどうかと思います。小説の叙述技法として芝居じみた言い回しが説明的で便利なのはわかりますが、であれば芝居うんぬんのくだりは持ち出さないほうがよかったように思います。(2003/3/24)



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